カスタマーサクセスにおける【オンボーディング】の概要
『オンボーディング』の広義ニュアンス

『オンボーディング』は
端的に表すと”慣れていただく”こと
本来は船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して
必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指しました。
人事用語としては、企業が新たに採用した人材を職場に配置・戦力化させるまでの一連の受け入れ/教育プロセスを意味します。
また、その他の注目すべき意味として
企業が提供するサービスの新規ユーザーの顧客に対して、サービスから得られる体験満足度を高め、継続的な利用を促し、LTVを向上させるプロセス(カスタマーサクセスにおける)も『オン・ボーディング』と呼ばれます。
今回紹介する意味は、まさにこのカスタマーサクセスにおける『オンボーディング』となります。
カスタマーサクセスの文脈における
『オンボーディング』
SaaSのカスタマーサクセスにおける「オンボーディング」とは、
新規のユーザーが『自走』状態でサービスを活用できるまでを導く/成功させるプロセスと
定義付けられます。
ここでいう所の「自走」とは、
ユーザーがサービスの使い方や仕様を理解し、その上
自身の手でサービスを操作・利用することで、本来の価値を実感する状態を示すと言えます。
オンボーディングの手法はさまざま存在し、ユーザーセグメントやサービスの特性に応じて、適した方法を検討が求められます。それでも、サービスの内容に関わらず、機能や活用方法を早期に理解してもらうことは有益なこと。
なので、この通称『オンボーディング期間』は
利用初期段階からユーザーに成功体験を与え、また、SaaSにおいて特に重要性の高い継続率の向上などに寄与するなど、現代のビジネスにおいて非常に重要なフェーズだと言われております。
どうしてカスタマーサクセスにおいて
『オンボーディング』が重要視されるのか?
初期段階のオンボーディングの影響は、カスタマーサクセス全体へと作用する
カスタマーサクセスの成功を考える上で、
『顧客ライフサイクル』を意識する必要があります。
ここでい言う所の『顧客ライフサイクル』とは、
「顧客がサービスに接触〜利用〜それを終えるまで」の全体の流れを、段階的に管理する概念。
フェーズの分け方にはさまざまなものがありますが、SaaSの一般的な活用事例では
価値を実感し、一定期間の継続利用に至るまでの流れを「導入期」「活用期」「定着期」に分けます。ここにおいて、オンボーディングは「導入期」から「活用期」へのステップアップをサポートの役割をします。
以下の図から分かるとおり、顧客ライフサイクルは段階的にステップアップするもの。
導入期から活用期への移行に失敗が生まれると、サービスを継続的に利用してもらうことは困難に陥ります。だからこそ、カスタマーサクセスの最初の第一歩から踏み間違えずに、長期的な成功に導くファクターとして
オンボーディングは、とても慎重に設計する必要があると分かりますよね。

早期のチャーンを阻止
SaaSのカスタマーサクセスにおいて重要なことは、
ユーザーにサービスを継続利用してもらい、LTV(顧客生涯価値)を向上させること。
適切なオンボーディングによって、サービス導入後早期に期待する便益を得ることができたり、課題を解決できたりすると、顧客の満足度は向上します。
一方、せっかくの良い機会に巡り合いサービス導入をしたものの、
使いこなし方が分からないばかりに、サービスの持つ価値を体感できず離脱してしまうユーザーは少なくありません。
だからこそ、ユーザー定着率の維持(チャーンの阻止)の一役を担う、オンボーディングをなくしてカスタマーサクセスは語れません。
長期的なアップセル・クロスセルの設計に影響
初期のオンボーディングの段階で、うまく顧客がサービスを使いこなせるようになると
おのずと、アップセル・クロスセルが促進されていきます。
というのも、顧客がサービス使いこなせるようになると
初期プランのニーズが満たされ、同時に新たなニーズ・物足りなさが生まれてきます。
ここに対して、『アップセル・クロスセル』の手法として
上位のプラン導入や、関連サービスの連携の話を提案すると
検討いただける流れが生まれるかもしれません。
このように、ロイヤリティの高い顧客を生み出すために
オンボーディングの最適化は必須なんですね。
カスタマーサクセスの
オンボーディングにおける3つのタッチモデル
「成功は届けられる人へ届ける」
がカスタマーサクセスの基本には、なるのですが
残念ながら、リソース(人・もの・金)には限りがあります。
したがって、オンボーディングを含め、カスタマーサクセスでは、
LTVという自社の指標と、顧客への価値提供のバランスをとるために、顧客をLTVから3つのセグメントに分類し対応します。
- ハイタッチ
- ロータッチ
- テックタッチ
タッチポイントを分けるメリット・必要性
個別最適化されたアプローチ
顧客の規模やサービスの利活用状況に応じてアプローチ方法を変えることができるため、それぞれの顧客群へ最適なフォローを行えるようになるからです。
提供者側のリソース(人・もの・金)の再配分
LTVから顧客をセグメント分けすることで、自社のリソースを顧客の状況状態に合わせて効率的に活用できるようになるからです。
ハイタッチ

ハイタッチ層はLTVが高い顧客、つまり、最も重要な顧客です。
自社の売上や利益に最も貢献している層となるため、ハイタッチ層の成功は自社の成功に繋がります。したがって、タッチポイントのなかでは最も手厚いリソースを確保し、個別最適化されたフォローを行いながら、顧客の満足度を上げていくことを目指します。
ハイタッチの施策
ハイタッチではリソースをふんだんに投下する施策を実行します。
例を挙げると、
- 個別CS担当による伴走したサポート
- 顧客のニーズに合わせてサービスをカスタマイズ
- 顧客の課題に応じたオリジナルの施策提案
- 経営層への情報共有
ハイタッチでは、顧客に伴走することで、顧客のニーズを拾いサービスの改善につなげて行くことが求められます。
しかし、担当者に依存し、属人的になりやすいといった課題もあるため、社内での共有方法を予め設定すると良いでしょう
ロータッチ

ロータッチ層は、ハイタッチ層よりも顧客数が多くなるため、ハイタッチで得たノウハウを汎用化・効率化させることが求められます。
ロータッチでの施策は、LTVに大きく影響するため、効率さに正確さを担保しなければなりません。
ロータッチの施策
ロータッチはあくまで効率的な施策を実行します。
例を挙げると、
- 複数のCS担当によるサポート
- 顧客の課題に応じた汎用的な施策の提案
- ワークショップやイベントの開催
ロータッチは集団的な接点を作ります。集団の中では顧客の一人一人が見えづらいため、サポート時のヒアリングはもちろん、イベントでアンケートを実施するなどして、顧客の声を収集しなければなりません。
テックタッチ

テックタッチ層は、LTVは最下層ですが、顧客数が最も多くなります。
顧客接点を人の手を介さない、テクノロジーを活用することから、テックタッチと名付けられました。
顧客単価が低いため、ロータッチよりも効率的に対応する必要があります。
テックタッチの施策
テックタッチは様々なツールを用いて行います。
例を挙げると、
- チャットボットでの自動サポート
- ヘルプページでのFAQ整備
- メールでホワイトペーパーや動画の共有
テックタッチはツールで自動化することが特徴です。
しかし効率の反面、チャーンのリスクが高くなるため、顧客接点は自動化しますが
CRMなどを用いて顧客のヘルスチェックを行う必要があります。
ただし、CRMでヘルスを測定できる人は、やりとりをする担当者だけになり、使用者などの現場の声がそのまま反映されないため注意してください。
オンボーディング設計のポイント
販売プロセスからのスムーズな移行
顧客との関係が始まったばかりの頃は、特に営業活動でのやりとりが重要になります。
そのため、カスタマーサクセスチームと営業チームは、早い段階から頻繁にミーティングを行い、情報を交換し、すべてのビジネス目標が明確に示されていることを確認する必要があります。

適切なKGI・KPIの設定と、顧客への共有
優れたカスタマーサクセスチームは、最初からKGIとKPIの設定に取り組みものです。
これは双方にとって重要なことです。
というのも、オンボーディングプロセスの遅れは、ベンダーだけでなく、顧客にも責任があるからです。
マイルストーンと目標を顧客に明確に伝え、軌道に乗るように頻繁に見直すように心がけましょう。
成功のリアルタイムな測定

カスタマーサクセスチームがオンボーディングの時に、
失敗するかもしれない最大の原因となり得るのは、
計画がうまくいっているかどうかを確認する方法が存在しないこと。
エンドユーザーがSaaS製品を積極的に使用しているかどうか
ログインしているかどうかを実際にどうやって知ることができるでしょうか?。
エンドユーザーがログインしているかどうかをすぐに確認し、
これを成功の一つの基準とし、後のオンボーディングやカスタマーエンゲージメントの段階に反映させることができなければなりません。
タイムリーで整理/整頓されたプロジェクトの進行プラン
オンボーディングプロセスで最も重要なことの一つは、最終的には終了するということです。t
たとえ、オンボーディングがどんなに魅力的であっても、顧客は永遠にオンボーディングの段階に留まることはできません。
タスクを整理し、すべての関係者(たとえ顧客側であっても)が割り当てられたタスクの期限を確認することで、オンボーディングプロセスを滞りなく進めることができます。
組織全体の完全な透明性を確保する

現代のカスタマーサクセスとは、会社全体で協力して取り組むべき課題。
なので、新規顧客のオンボーディングには、すべての部署(および会社役員)の意見と注意が必要になるのです。
そして、
カスタマーサクセスチームは、オンボーディングプロセスにおける問題やボトルネックを様々な部署に迅速かつ容易に警告し、これらのチームとシームレスに連携して顧客を軌道に乗せることができなければなりません。
*参考文献 https://www.clientsuccess.com/blog/5-steps-to-create-the-best-customer-onboarding-experiences/
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