リテンション・マーケティングとは?
みなさんは何かサブスクリプションに入っていますか?
映像系ではNetflix、Amazon Prime Video、Hulu、U-NEXT、dTV、DAZN、音楽系ではApple Music、Spotify、LINE MUSIC、YouTube Music Premiumなど。調べてみると、焼肉・香水・絵画・絵本など、様々な種類のサブスクリプションサービスがあります。
筆者はAmazon PrimeとNetflix、Apple Musicと Spotifyに入っていますが、それぞれの月額を明確に覚えていません。払っている金額分、それぞれのサービスを使えているかは分かりませんが、毎月サブスク更新をし続けています。
そう、いつの間にか沼にハマっていました。
今はあまり使っていなくとも、以前使ったときに良い体験ができたから手放したくない。
このような心理にさせるサービスの戦略をリテンション・マーケティングと呼びます。
リテンションの語源
リテンション(retention)とは、保持・維持ということ。
つまり既存顧客を対象に
長期的に良好な関係を築くのを目的としたマーケティング施策。
なので、例えば既存顧客に対して
リピート購入や定期購入などを促したります。
リテンションモデルの定義
ちなみに、リテンションマーケティングにおいて
顧客が理想な状態をリテンションモデルと呼び
以下のように定義されます。
①利用者が、日常的・継続的にそのプロダクトを利用し、モノの所有に対してではなく成果に対して対価を払う
②利用者が、いつでも利用を止める選択権を持ち、かつ初期費用が非常に少なくてすむ
③利用者が、それ無しでは生活や仕事ができない・使い続けたいと断言できるほど明らかにプロダクトが常に最新状態に更新・最適化され続ける
④利用者が、自分にとって嬉しい成果を得られるならば、自分の個人データをプロバイダーが取得することを許す
“あなたへのおすすめ”で逃がさない!それがリテンションモデル
みなさんは映画やドラマをどんな方法で観るでしょうか?
DVDやBlu-rayを購入・レンタルする方法もあると思います。しかし、これらは観る場所が限られてしまいます。また、同じ作品を何回も観る人もいると思いますが、多くの場合は1、2回観たら、もう観ることはないでしょう。
一方で、リテンションモデルのサービスはいつでもどこでも観られます。また、作品が次々と更新され、ユーザーの視聴履歴に合わせて、好みのジャンルを選出し、そのなかで最新・最適なものをおすすめします。
リテンションモデルのサービスの場合、買って終わりではなく、ユーザーにサブスク料金を払い続けてもらわなければなりません。ユーザーに解約されないために、得られる体験が一定化せず、最新・最適の体験をユーザーに合わせて提供し続けることが求められます。
もし、”あなたへのおすすめ”がなかった場合、ユーザーは自ら検索し、自分の好みのものを探さなければなりません。”あなたへのおすすめ”があることで、ユーザーに対して、最新・最適の体験を提供し続け、価値を感じてもらうことで、契約を更新し続けてもらうことが可能になります。
リテンションマーケティングの導入メリット
LTVの向上が見込める
リテンションマーケティングによって、利用をリピートする顧客が増えると、
将来的な収益性を考える指標である、LTVが向上すると予想されます。
LTVとは顧客生涯価値を意味する言葉で、1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額を指します。「1:5の法則」で一般的に言われるように、新規で顧客を獲得するよりも既存の顧客を維持する方が、コスト・時間がかからないため、利益率の向上が見込めます。
LTVを向上させる方法については以下の記事で詳しく紹介しております。
ロイヤリティの高い顧客を育成
顧客ニーズに合わせた丁寧なコミュニケーションを徹底することで
より単価の高い上位の商品を選んでいただけたり(=アップセル)、
関連商品を合わせ買いしてもらったり(クロスセル=)などで顧客単価が上がります。
このように、購入金額の大きい優良顧客を増やすことができると、利益率が向上して経営の安定が望めます。
さらに、優良顧客を優遇する、特別な体験を提供するといった取り組みをすることで
信頼/愛着を持って企業を支持してくれるロイヤルカスタマーが育成されていきます。
また、彼らが将来『アドボケーター』となり
口コミなどで、サービスを広めてくれるかもしれません。
リテンションマーケティングのポイント
顧客を分類・分析する
リテンションマーケティングでは、顧客のことをよく知り、ターゲットに合ったアプローチをすることが重要。
リテンションマーケティングの戦略を立てる際には、属性や行動履歴のデータを分析して、顧客のセグメントを行います。「初めてそのサイトを利用した」「〇〇ジャンルの商品を購入」「割引クーポンに反応した」といったWeb上の動きから、「間隔を置かずに次のメッセージを送る」「同じジャンルの関連商品を紹介する」「割引クーポンを付ける」というように、どんなアプローチが有効なのかを考えることができます。
RFM分析
顧客セグメンテーションのための代表的な分析方法のひとつが「RFM分析」です。RFMという名称はRecency(直近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累計購入金額)の頭文字から来ており、これらの指標を用いて顧客データを分析します。
RFM分析では、頻繁に多くのお金を使う優良顧客、一定期間利用のない休眠顧客、他社に乗り換えた離反顧客のほか、新規顧客、安定顧客などに購買層を分類します。これらの分類と属性などを掛け合わせて購買傾向を導き出し、顧客セグメントごとのリテンション戦略を立てます。
顧客セグメントに合わせた的確なアプローチ
セグメントの特性やこちらの意図に合わせて、情報提供やプロモーションを行います。
例えばリピーター向けと休眠顧客向けのメールマガジンに掲載するクーポンを切り替えるとします。一定の関係ができておりクロスセルを狙いたいリピーターには、通常商品に加えて関連商品の購入を勧めるために、セット買いでお得になるクーポンを掲載します。
一方、しばらく購入のない休眠顧客向けには、とにかく目にとめてもらって再購入をアピールするために、目玉商品のクーポンを発行します。
ただし安ければいい、お得ならなんでもいいというものではありません。顧客に「今後もこの商品・サービスを使いたい」と感じてもらい、長期的な良い関係を築くためには、自社の商品・サービスの価値への理解を促すことが必要だからです。何よりも質の高いCX(顧客体験)の提供が大事だということを忘れてはいけません。
CRM支援ツールを活用する
ここまで見てきたようなデータ管理やデータ分析、セグメンテーションとそれに基づいた情報の出し分けなどの作業は、それぞれに専門性が高く手間もかかるため、人手で行うには限界があります。
そこで昨今、広く利用されているのが、CRM(顧客関係管理)支援ツールやCRM支援サービスになります。
CRM支援ツールの共通した、主な機能は顧客情報の収集、分析、管理の自動化になります。
支援ツールや支援サービスを導入して使いこなすことで、人的リソースや専門的な知識の不足を補い、PDCAを早く回転させることが可能となるのです。
ただし、これらのツールには多くの種類があり、高機能になればコストもかさみ、運用設計も複雑になるのは避けられません。なので、何の目的で導入するのかをしっかりと考えるようにしましょう。
まとめ
今回はリテンションマーケディング施策についてまとめました。
特に、リテンションモデルの登場は、カスタマーサクセスという概念を注目させたきっかけになりました。
売り切りモデルと買い続けてもらうモデル、これらの違いを理解することが、カスタマーサクセスを行う上で必要となります。
※参考文献「カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な『これからの顧客との付き合い方』」弘子ラザビィ,英治出版株式会社,2019
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